あたしの背にある一対の翼のタトゥ。彼のニードルはズキズキと疼くようにあたしを痛めつけた。彼はあたしをきつくきつく縛って、それからひどく鞭を打った。あたしは縛られるのが好き。何もかも彼が教えてくれた。
あたしの裸。あたしの狂うところ。シャッターの音が絶え間なく聞こえて、あたしはあたしだけにたくさんの目が注がれるのを感じる。男たちはあたしを縛り上げて、それから梁に吊るす。長い鞭があたしの肌に絡みつく。なんども、なんども。そして、裂けるようにして血のひとすじひとすじがにじみだす。ひとりの男はそのうすい鎖状の血の粒たちを、舌を這わせるようにして舐めとっている。あたしはそんなときに彼のことを想いだすのだ。
|
 |
|
彼の心のなかはいまでもわからないことだらけだ。彼はあたしを愛してくれた。ひどくいびつで、そして狂おしいかたちで。彼の昂ぶりは暴力的で絶望的で、あたしはいつもそれを全身で浴びた。獲物を狩るのようなセックスのあと、彼はたいていあたしにアフリカを語った。ルワンダのジェノサイドを、ソマリアの内戦を、南アフリカのアパルトヘイトを。彼はそれらを自らの目で見、耳で聞き、嗅ぎ、味わい、触れずにはいられなかったのだ。彼は獰猛に取材したことだろう。あたしにはわかる。
彼はアフリカへと旅立った。彼はたくさんの死と暴力と歪んだ政治を見た。文章をつづり、写真を撮った。日々起こる死に対して、彼はその意味を問うた。多くの場合、そこに答えはなかったが、彼は確実に少しずつアフリカの大地の上で流される血をとらえ、描写する方法を学んでいった。
|
|
一時帰国のとき、彼はあたしにタンザニアン・サファイアの原石をくれた。それはちっともきれいではなくて、それがサファイアなのかすらあたしにはわからなかったのだけれど。彼は結婚しようと言った。アフリカで毎日、おまえの髪をつかんでおまえに乱暴にキスすることを考えてたよ。次に帰ってきたら、俺は絶対にいいジャーナリストになってる。そうしたら、俺たちは結婚しよう。
彼は帰っては来なかった。正確にはわからないが、今日あたりが彼の命日。乾季。すべてのワイナリーがちょうどその年のピノタージュをつくり終えた頃。彼はアフリカのどこかで彼の被写体と同じように血を流して死んでいった。ピノタージュは爽やかな血の味。たくさんの血を吸った、奪い去り産み育む大地の味。そう、彼は言った。
あたしの心にはいつもぽっかり穴があいていて、それが貪欲に血を吸うのだ。アフリカの大地のように。あたしは、ピノタージュを飲む。
|
 |
|